深海で生き続ける「生きる化石」

シーラカンス

シーラカンス目 Coelacanthiformes ラティメリア科 Latimerriidae

【学名】ラティメリア・カルムナエ Latimeria chalumnae

3億5千万年前に出現し、その姿をほとんど変えていないとされ、そして今もなお多くの謎が解明されないままとなっている謎の魚、
シーラカンス。大きさは、体長が165~170cm、体重が75~80kg。
ここには3体の剥製と、常時マイナス20度に保たれた専用ケースで2体の冷凍個体が展示されています。
こうした展示は世界を探しても沼津港深海水族館だけ。ぜひ、近くでじっくりと、その神秘的な姿をご覧ください。

1938年、それは全世界から
「世紀の大発見」と呼ばれた。

1938年12月末、南アフリカ、イーストロンドンの小さな博物館に勤務するM.C.ラティマー女史のもとに、トロール船のグーセン船長から一本の電話が入ります。「奇妙な魚があがった。」早速港に駆けつけたラティマー女史は、捕獲された奇妙な形態の魚に目を見張りました。そして魚を博物館へ持ち帰ります。しかしどんなに調べても前例がなく、名前すらわかりません。女史はスケッチを描き、魚類学の権威であるJ.L.B.スミス博士に送ります。この一枚のスケッチをきっかけに、その魚が7,500万年前に絶滅したと思われていたシーラカンスであることが判明したのです。

1980年代に日本の学術調査隊が
生きたシーラカンスの捕獲に成功。

コモロ政府との長い交渉の末、第一次調査隊がコモロ諸島に入ったのは1981年12月4日。地元の漁師たちを動員し捕獲に成功したのは、帰国を目前にした12月31日深夜でした。その後も1992年までに第八次まで調査が行われ、5体のシーラカンスが日本へと持ち込まれることとなったのです。日本の宝ともいえるこのシーラカンスは、国の認可を受け、駿河湾を臨む沼津の地で公開される運びとなったのです。

深海に棲むシーラカンス

シーラカンスは限られたエリア内の水深200mから600m付近の深海域に生息しています。日中は岩棚などの中で複数個体のグループで暮らし、夜になると比較的浅場まで浮上し、エサを探します。深海は水温・水質の変化が小さく安定した環境で、外敵も少ないことから、地球規模の自然の変化、大干ばつや氷河期などの過酷な環境が訪れても耐えられたのではないか、と考えられています。逆に浅瀬や、海から川へと生息場所を変化させていった多くの仲間は、環境の変化に耐えられず絶滅してしまいました。そうした種は現在、世界各地で化石でしかその姿を見ることができません。

鎧のように固いウロコ

コズミン鱗(りん)と呼ばれる特殊な鱗(うろこ)で全身が覆われています。この硬い鱗のおかげで、外敵から身を護ることが可能となりました。現在、この硬いコズミン鱗を持つ魚類は、シーラカンスとオーストラリア肺魚だけとなっています。

シーラカンスの産卵[卵胎生の魚類]

シーラカンスは卵を産むのではなく、体の中で卵を孵(かえ)す「卵胎生」と呼ばれる方法で繁殖します。これに対して卵を産むものは「卵生」と呼ばれています。卵胎生魚類の赤ちゃんは、親と同じ姿をしており、泳ぎ回ることができるので安全に育つことができます。しかし、産まれてくる数は卵生の魚に比べると極端に少ないのも事実です。シーラカンスが卵胎生であることは、化石の研究からもわかっていました。以前に捕獲された個体の体内から見つかった卵の数は30個ほどで、一個の大きさはなんとピンポン玉ほどの大きさもあり、お腹から産まれ出る赤ちゃんは30cmにもなっているそうです。シーラカンスが現在まで生きてきた秘密は、この繁殖方法も大きな理由だったのかもしれません。